ふくろう通信 日本の教育は大丈夫か 中国の猛追
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ふくろう通信
2016年6月
日本の教育は大丈夫か
「教育」でも先進国を猛追する中国
私は日本の教育に大変危惧を持つものですが、お隣中国の教育熱は大変なもので、少し脅威にも感じます。
急激な経済成長をバネに、莫大な国家予算を湯水のように教育分野へ注ぎ込み、中央政府の有無を言わせぬ剛腕によって、世界と戦えるトップエリートを養成しています。
中国の教育現場は巨大なエネルギーを内包し、先進国型へと急変しています。
政府の教育立国への強力な推進と、教育にかける国民の熱気も沸騰し、10年後といわず中国の教育レベルは間違いなく先進国と同等となり、日本を抜き去ることでしょう。
教育が国の将来を左右することを忘れると、日本は世界の中でもみすぼらしい国となってしまう危険性大です。
中国の教育費の増額:
右図は小学校の児童1人当たりの教育予算の推移で長い間、GDPの2%前後でしたが、2000年以降増額に転じ、12年には4%を超え、その後も飛躍的に増加しています。
ちなみに10年の日本は3.6%であり、多くの先進国は5%を超えています。中国にも数値的には抜かれました。
グラフは名目値ですが実質値もほぼ同じです。
教員輩出、高校大学連携、欧米への高校留学、少数精鋭教育:
教員の養成、質の向上を一挙に進め、教員養成のための師範大学を拡充し、教員が増加しています。
北京、上海など大都市には、重点高校が多数あり指定された高校は、徹底した英才教育を展開、飛び級制度があり、小・中・高一貫校や中・高一貫校も増えています。
中には教員の半分は外国人で、授業を英語で行っている高校もあります。
卒業後は、欧米の有名大学に直接進学する生徒が増加。
北京市は高校と大学の連携型の高校があり、高大が連携して高度な人材育成に取り組んでいます。
また1クラス10~20人という少人数クラス制度を採用し、専門家、学者などを学外から招き、生徒の興味や特徴に合わせた学習指導を行っています。
度肝を抜かれた中国視察の日本人視察団:
昨年、有識者の中国の教育現場の視察があり、代表的な大学・研究機関や高校などを見学してその報告がありました。
中高一貫校で進学校として有名な北京第35高校(右授業風景)では、ロボットの作成、人工雷の研究があり、内容も高度で、実験棟などの設備は大学並みでした。
若く優秀な教員を配置し、スポーツ、伝統音楽にも取り組み、勉強一辺倒ではありませんでした。
上海市甘泉外国語高校は、日本語を第1外国語とする上海市で唯一の高校です。
これまで多くの日本語を話せる人材を育ててきましたが、いまでは英語、韓国語、独語、仏語、露語まで広げており、国際的な人材養成高校になりました。
指導者が先導して強力に政策を推進できる中国は、民意よりも中央政府の判断で国家が動くため、研究開発や教育でも党と政府の方針で進められています。
最先端科学研究に国家予算が潤沢に投入されているのが中国の強みです。
中国の場合は、「先進国に追いつき追い越す」という大命題があります。
日本が教育現場の課題を検討している10年間に、中国がすぐに追いついてくるでしょう。
そのような認識を日本の政治家、教育者、そして何より、ゆとり教育にどっぷりつかった日本人自身が持ってほしいと思います。 記 読売新聞記事を参考