ふくろう通信 新型インフルエンザで心配されるCOPD患者
- ふくろう通信
2009年12月
新型インフルエンザで心配されるCOPD患者
新型インフルエンザのワクチン接種が、長崎では2009年11月から始まりました。
まだ入荷するワクチンの数が少なく、ご迷惑をおかけしております。
ワクチン接種は、死亡者や重症者の発生をできる限り減らすことを目的としています。
そのため接種には優先順位が決められています。
その優先順位とは、
1)医療従事者
2)妊婦、基礎疾患のある人
3)1歳から小学3年生に相当する年齢の小児
4)1歳未満の小児の保護者です。
この中で、重篤化する可能性のあるハイリスク群は、2)、3)で2)の基礎疾患とは、
「慢性呼吸器疾患」
「慢性腎疾患」
「慢性心疾患」
「慢性肝疾患」
「神経疾患・神経筋疾患」
「血液疾患」
「糖尿病」
「疾患や治療に伴う免疫抑制状態」
「小児科領域の慢性疾患」
になります。
新型インフルエンザの場合、感染力は強いものの、重症化は季節性のものと大差ないか、若干強いくらいです。ただし世界の報告例をみてみると、新型は肺での増殖が著しいことがわかっています。
たとえば、オーストラリアとニュージーランドの研究論文では、新型インフルエンザに感染した患者722人の中に、慢性肺疾患(喘息、COPD患者など)患者が32.7%も含まれていました。
また、カナダの研究論文では、新型インフルエンザの入院患者168人のうち、約10%がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者でした。この傾向は日本の新型インフルエンザでの死亡者にも表れており、日本の状況では、「新型インフルエンザに罹患しやすいのは若年層(20歳未満)だが、高齢者(60歳以上)で死亡率が高くなる」と指摘されています。
60歳以上の死亡者11人のうち、3人がCOPDを基礎疾患に持つ人でした。
これらの状況をより詳しく分析し、日本呼吸器学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会が合同で以下のように発表しました。
1)重症者に慢性呼吸器疾患の人が多い。
2)若年者ではぜんそく、高齢者ではCOPD。
3)日ごろの治療が不十分な人が悪化しやすい。
4)COPDと診断されていない人はワクチンの優先接種者にならない。
この発表でも指摘されているように、新型インフルエンザではCOPDを基礎疾患に持つ人は、ハイリスク者の中でも、さらにハイリスク者なのです。
ところが、日本のCOPD患者の場合、40歳以上の大規模疫学調査での推計患者は530万人いるのにもかかわらず、厚労省発表の患者統計では、治療を受けているのはわずか22万人。
この数字は信頼できません。
本当は多くの人がCOPDなのに、診断を受けていないとワクチン接種を優先的に受けられず、罹患してしまうと、重症化のリスクが高いのです。
「階段の上り下りで息切れする」「咳や痰がでる」「風邪が治りにくい」「呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューがある」といった症状に気付いた人はすぐにも呼吸器内科を受診し、正しい診断・治療を受けてください。
当院には呼吸機能検査があり、すぐに診断可能です。
今回はオムロンヘルスケアマガジンを参考としました
COPD(慢性閉塞性肺疾患):
慢性気管支炎、慢性肺気腫と呼ばれていた疾患を、WHO(世界保健機構)がCOPDに統一しました。
肺に慢性炎症が起きて気道が狭くなったり、肺の末端でガス交換をしている肺胞の壁が破壊されたりすることで起こる病気です。
主な原因は長期間の喫煙です。代表的な症状は体動時の呼吸困難、咳、痰。悪化すると在宅酸素療法(HOT)の適応になることがあります。
風邪をひいたりすると急性増悪を起こし、呼吸不全となって生死にかかわる状態になった患者さんを何度か経験しました。
年末年始のお休み
12.29日(火)午前中まで、12月30日から1月3日までお休みします