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ふくろう通信 最近経験した、ステロイドが有効だった症例

  • 2021年
  • ふくろう通信

2021年6月 第261号

最近経験した、ステロイドが有効だった症例 

2例の顔面神経麻痺、1例の亜急性甲状腺炎

最近、ステロイド(副腎皮質ホルモン)がとても有効だった患者さんが、3 人おられました。その 症例を報告します。ステロイドは確かに皆さん方にとって、少し心配な薬と思いますが、病気によ ってはとても有効性の高い薬なのです。よくわきまえて使うと、効果が高く、患者さんからも喜 ばれます。また逆に漫然と使用したり、その危険性を無視して使うと重大な問題も起こります。

 

                              

60 歳台と70歳台の男の方の症例で、今まで大きな病気はない 方々です。どちらとも左の顔面が麻痺し、口を大きく開けることや目を 閉じることが困難になる、しゃべりにくくなる、麻痺側の口角が下がり、 よだれが垂れる、などの症状がありました。末梢性顔面神経麻痺でした。 麻痺の原因は様々ですが、一つにヘルペス属などのウイルス感染が疑わ れます。速やかにステロイド治療を開始しました。最初はかなりの量のプレドニン(ステロイド剤)を内服し、次第に漸減していくようしましたが、副作用は全く見られませんでし た。効果は覿面極めて早くから有効でした。これは症状が現れてから、すくに来院されたのが良かっ たものと思います。両者とも現在ではすっかり治っています。この病気は、ずっと以前に田中角栄元首 相が罹られたので、多くの年配の方は覚えておられるのではと思います。そんな稀な疾患ではなく、 時おり診ることがあります。

 

 

次の患者さんは30代の女性の健康な方ですが、一度だけかなり前に 肺炎の既往がありました。今年3月中旬、発熱、喉の痛みと腫れ、動悸、倦 怠感などの症状で来院されました。甲状腺を触わると、大きく腫れ上がり、 少しでも押すと強い痛みがあります。経験からすぐにこれは亜急性甲状 腺炎だと判断しました。この病気は甲状腺内に炎症がおき、甲状腺組織が壊れる病気で、甲状腺ホルモンが血中に流れ出て、血中の甲状腺ホルモンが上昇します。この過剰 なホルモン上昇で症状が出現するのです。風邪などのウイルス感染により生じる可能性があります。 症状に応じてステロイドや抗炎症薬の投与が必要です。この方は症状が激しかったためプレドニン(ス テロイド)を使用しました。これにより速やかに痛みや発熱が改善しましたが、薬を早く減らしたりする と、ぶり返してしまうことがあります。この患者さんもやや早めにステロイドを減量したため、再発しま した。再度増量し、ゆっくりと減量することにより、著効し現在は全く問題ありません。治療前後で頸部 のエコー検査を実施、甲状腺の腫れは完全に消失、またホルモンも正常化しました。私は今までにこの 疾患を経験したことが何度かありましたが、当院では開業21年以来、初めての患者さんでした。

 

このようにステロイド剤は上手に使えばとても有効です。この他にステロイドが有効な疾患は沢山 あります。自己免疫疾患(膠原病など)や気管支喘息、アトピー性皮膚炎、重症の感染症、ネフローゼ、 アナフィラキシーショック等に有効です。ストロイド薬吸入治療により、50年以上前は、喘息の年間死 亡者は15000人以上でしたが、現在では3000人たらずで、今昔の感に堪えません。

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