ふくろう通信 ベートーベンの音楽と私
- ふくろう通信
2017年9月 第216号
ベートーベンの音楽と私
大学1年で初めて弾いた交響曲はベートーベン交響曲第3番、英雄。
今月9月3日に長崎交響楽団の演奏会があります。
メインの曲はベートーベンの英雄交響曲です。
思い出深い印象的な交響曲で、長崎大学管弦楽団に入団して、初めて弾いた交響曲がこの曲でした。
美人の先輩からこの曲の個別指導を何度かしてもらった時は、時間がたつのがもったいない感じでした。
1楽章は序奏なしの、凛とした2回の全奏和音からはじまる、颯爽とした音楽、2楽章は哀惜をこめつつ、地獄へ向かうような葬送行進曲、3楽章はあぶくがはじけるような、リズム感の横溢した楽想、トリオでのホルンの輝き、4楽章では音楽が次々と場面を変え、最後は超高速で突進して終わる気持ちの良さ、実に爽快感、充実感を与えてくれる交響曲です。
演奏時間が従来の常識を破った50分という長さと、意表をつく斬新で精緻な構成、ハイドンやモーツアルトの交響曲からさらに一歩前に出ました。
ベートーベンの曲は本当にたくさん弾きました。
大学2年生の時はバイオリン協奏曲(磯恒雄演奏)と第5交響曲「運命」、3年生の時は交響曲第7番、4年生では交響曲第6番「田園」、ピアノ協奏曲第4番、この協奏曲は当時高校生の清水和音が演奏しました。
彼の高校生離れした演奏には全く驚嘆しました。今や彼は日本屈指の演奏家となってCDも沢山出ています。
團伊玖磨指揮による、演奏するのが比較的珍しい「合唱幻想曲」と團の曲「西海賛歌」を佐世保市民管弦楽団と共に演奏、また長響五島巡回演奏会に参加し、福田伸光さんのピアノで協奏曲第5番「皇帝」を弾かせてもらいました。
長崎市民会館の体育館では、山本直純指揮の第九を演奏しましたが、すごい人数の演奏者と合唱でした。
このほかエグモント序曲、コリオラン序曲、レオノーレ第3番等々、ベートーベンと共に過ごした大学時代でした。
結局今までに交響曲は第2番以外、全部繰り返し弾いたことになります。
その中でも交響曲第9番合唱付き、いわゆる第九が最も多かったです。
今年の年末12月17日、日曜日、長崎交響楽団は、オペラ指揮で有名な星出豊氏を指揮者に招き、長崎県オペラ協会と共演で第九の演奏会を開きます。
第九は年末の風物詩ですし、長響でも繰り返し演奏していて、それぞれに素晴らしい演奏会となりました。
第九は複雑で精神性も高く、技術的にも難解なところがある、本当に弾きがいのある曲です。
一丸となって練習し、そして精魂こめて演奏するのです。
今度の指揮者は火のような熱情を持ち、しかも楽譜にもしっかりと目を通され、時代考証的に正しい方向性の演奏をされるはずです。
指導も厳しい方ですので、今度の演奏が素晴らしいものになると確信しています。どうぞみなさんふるって、演奏会におこし下さい。
音楽会を通して友人となった方が、福島にお住まいのH氏です。
一度そこに私たち夫婦でお伺いしました。それこそ仙人様が住むような桃源郷で、ロッジを建てて一人住まいされています。
周りには綺麗なお花や、食用になる草が一面生えていて、そこで音楽三昧の自活生活です。
すごいバイタリティをお持ちの、大変博学な読書家です。
ご子息は、あるプロのオーケストラのチェロの首席奏者です。
音楽に対する情熱は並大抵でなく、多くのことを教えていただきました。
もう80歳にもなろうかという年齢を感じさせません。私にとって深く尊敬する年上の友人です。
そのH氏が最も崇拝するという音楽家がベートーベンです。神より上だと断言されます。
彼の音楽の中では交響曲や管弦楽曲より、弦楽四重奏曲、さらにピアノソナタが重要だとおっしゃいます。
わが長響のサポーターとなっていただき、はるばる福島からたびたび来崎され、演奏会に来られます。
今度の英雄はどうでしょうか。辛辣な演奏批評が耳に浮かんできます。(8月31日執筆中において)