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ふくろう通信 アメリカの実態と日本の医療の未来

  • ふくろう通信

20118 

アメリカの実態と日本の医療の未来

 先月末、長崎県保険医協会の定期総会が開かれ、そのとき記念講演、「貧困大国」アメリカの真実、があり聴講しました。
演者は堤 未果氏、若くて美人、魅力的な才媛でした。声もきれいで話し方も大変わかりやすく、内容もしっかりしたものでした。
以前彼女が執筆されたルポ「貧困大国アメリカ」(岩波新書)を読んでいたこともあり、大変興味深く聞きました。その内容の中に医療問題があり、重要なことが述べられました。私がそのときメモしたことを今回かいつまんでご紹介したいと思います。

 

アメリカの実態
アメリカは世界最大の強国、豊かな国といったイメージで、特に1950年代は圧倒的な存在でした。しかしマスコミはあまり実態を伝えませんが、現在は貧困化が進行、オバマ大統領就任後も着実に進んでいます。ごく普通の中流階級も負債で貧困化し、テント村が急速に拡大。家の差し押さえは7秒に1件、食料切符が必要なひとは7人に1人。定職がない人は10人中6人、実質失業率は20%、自助努力しない生活保護者は5年間で打切りと徹底しています。

 

アメリカの医者のあいさつ:
日本ではまず患者さんに「どうされましたか」などと聞くことが大半ですがアメリカではまず「どこの保険会社のどのプランにお入りですが」と尋ねるのだそうです。
95%の人がなんらかの民間の医療保険に入っており、保険の程度でどれだけの治療が受けられるかが決まっていて、病院も先生も自由には選べません。
患者が救急車の中に乗っているときも同じことを聞かれるというから驚きです。医療の中に確実にビジネスが入っています。

 

驚きの保険会社:
子宮筋腫と診断され、検査診断で100万円かかり、結局子宮筋腫でないことがわかると保険金の支払いが却下、何回も保険会社とやりとりしても埒が明かず、最後は保険会社はテープ電話のみの応対となります。
却下で保険会社の職員の点数が上がるということです。もし一人がんになると2000万円の費用がかかり、保険に入っても莫大な金がかかります。
それに収入が高いほど保険料は安く、低いほど保険料が高いという日本と全く逆な状態で、貧困層に極めて厳しいようです。医療保険を持っていても家族でがん患者が出れば破産を覚悟しなければなりません。

医者も大変で保険会社とやはり契約し、看護師数、事務職員数などは指図され、できるだけ少ない人件費でいくよう指導されます。
日本同様かそれ以上に、アメリカも事務手続きが極めて煩雑で、1週間のうち、4日患者診て3日は事務にあたる医者もいます。このため50時間寝ていないでそのまま手術に入る医者もおり、これで医療過誤もおきやすくなります。実際訴訟される医者も多く、莫大な費用を払って、訴訟保険に医者は入ります。2000万の収入があるのに1800万保険金を払わねばならなくなった医者もいて何のために働いているのかわからないと嘆いています。
その結果医者の自殺率はアメリカで各種の職業の中で最も高くなっています。
アメリカで儲かっているのは弁護士、大手製薬会社、金融、保険会社、軍需産業で、医者はすべてが必ずしも儲かっていないし、多くの患者も辛い状況にあります。

 

くすりづけ:
コンビニには日本とは比べられないくらい大量で様々な薬品があり、一大ビジネスとなっています。
You sick,We quickがキャッチフレーズで、人々は高額医療のため市販の医薬品で済ませようとします。また世界一のサプリメント消費国です。1年に7万人の子どもが誤飲のため病院を訪れ、死因の第一位はなんと薬の副作用で、年間30万人が死んでいます。

 

医療の市場化
医療が市場化すると、日本もアメリカのようになる恐れが高くなります。
アメリカが加入を勧めるTTPに24の分野がありますが、もっとも国民に影響を与える1つは医療の分野です。
市場化されアメリカの金融、医療資本が日本に入ってくると、国民皆保険の制度が危うくなると日本医師会、保険医協会は考えています。
米国の市場化導入時のやり方はワンフレーズをばらまく、内容をぼかす、議論させない、マスコミには一部しか見せないです。TTPが何だかよくわからないまま決まってしまう危険性は大です。
日本はWHOで医療制度第一位と認められたように、世界で冠たる医療制度充実国で、国民皆保険は日本の宝、誇りです。これをビジネスに渡して、医療制度の市場化をさせては絶対にいけない、と結ばれました。

 

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