ふくろう通信 呼吸器・感染症
- ふくろう通信
2009年10月
呼吸器・感染症
私は内科一般を診ますが、専門は呼吸器・感染症です。
長崎大学熱帯医学研究所内科(熱研内科)で研究しました。
当時の教授は松本慶蔵先生で、呼吸器、感染症の大家として広く知られた方です。
今も大変お元気で、今年4月より長崎から熱海に移り住まわれておられます。
私は同科で様々な呼吸器、感染症の疾患をたっぷり経験し、勉強させてもらいました。呼吸器、感染症は奥深い学問ですが、その臨床の一部を振り返ってみます。
肺癌の増加:
大学病院では通常見られないような疾患に立ち会うことが多く、たとえば重症化した成人の水痘症では、肺炎までなって治療に神経を使ったことを思い出します。
また、肺癌の方が予想以上に多いことでした。
時にはベッドの半数近くが肺癌患者さんで埋められることもありました。肺癌は増加してきており、発見、治療が遅れがちになるので、未だ予後が悪い病気です。最大原因である、タバコは是非おやめになることを強くお勧めします。
COPD:
また煙草が原因で慢性肺気腫、慢性気管支炎(COPD:慢性閉塞性肺疾患)になる方もかなり増えてきており、今後さらに問題となってくることは必至です。民謡の歌手の女の方がおられました。
喫煙を60歳ころまで続け、肺気腫になられ、急速に病状が悪化、最終的には酸素療法から、人工呼吸器装着となり亡くなられました。
女性がタバコを吸うと、男性以上に増悪します。若い女の方で吸っている方、どうぞご注意下さい。早く老けますし。
気管支喘息:
50歳男性、九電で働いていた壱岐の方は、喘息が難治性で、発作を抑えるために長い間点滴を続けたり、内服薬や注射液でステロイド剤を投与したりで大変でした。
このような方が結構おられ、また本人の管理が悪かったりすると、死に至る発作もあり、死亡率も高かったのです。
最近ステロイド吸入薬が導入され、臨床の場は一変し、まずよほど重症でない限り入院しなくてもよくなり、死亡率も低下しました。今昔の感に絶えません。
細菌感染:
呼吸器の感染症はウイルス感染と同様、細菌感染も多く問題になります。
私たちの教室では、細菌感染症が重要な研究のテーマの一つで、精力的に取り組みました。ブランハメラという菌が、呼吸器感染症で起炎性の高い菌であることを、わが国ではじめて証明したのも当教室です。
私が田上病院在任中、この菌が院内感染をひき起こしたことを、教室の若い先生の協力も得て遺伝子レベルで証明し、チェコの首都、プラハの国際感染症学会で発表しました。
併せて生まれて初めてのヨーロッパを、音楽を中心に楽しませてもらいました。
インフルエンザ:
かぜの原因となるウイルスがどれだけあるかご存知でしょうか。約200種以上あるのです。
その中の親玉がインフルエンザウイルスです。現在はかぜのウイルスとは別格に扱うことになっています。理由は症状がさらに強く、呼吸器ばかりでなく全身の感染症であること、高齢者をはじめ免疫の力の落ちた方は時に死亡するためです。最近流行の新型インフルエンザA型の症状は、従来のものとほぼ変わりないのですが、次の点に特色があります。
1)集団感染しやすく、急速に広まっていること
2)消化器症状がやや多いこと
3)若干重症化する率が高いこと
4)若い健康な人でもまれに死亡することがあること
これは特にタイで問題になっているようです。予防は従来と変わりありません。タミフル、リレンザはまず有効です。早く診断し治療を開始することが大事なことを強調しておきます。
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