ふくろう通信 明けましておめでとうございます
- 2020年
2020年1月 第244号
明けましておめでとうございます
音楽を通して世界の民主化、自由、平和を、そして長崎の文化の向上へ
ゴーンさんの逃走劇や、アメリカとイランとの緊張など、年頭から大変な事になっていて目が離せません。それはそれとして、今年は記念の年、おめでたい年であります。スポーツでは東京オリンピックが開催されます。音楽ではベートーヴェン生誕250周年にあたり、いろいろなイベントがあることでしょう。さらに私どもの長崎交響楽団は誕生50周年にあたり、記念のコンサートが夏7月12日(日曜日)に開催されます。
まずベートーヴェン生誕250周年にあたり、一つの話題を提供したいと思います。ドイツの東部、エルベ川沿いに「ドレスデン」という、比類なき美しい古都あります。第二次世界大戦でイギリス空軍に爆撃され、街は完全に破壊されて沢山の人が亡くなりました。少し前「ドレスデン」という映画がありましたが、それを見たらその経緯がわかるでしょう。日本人にとっては、京都が完全に無くなったのと同じことを意味します。旧東ドイツ政府は、コツコツと昔通りに、街を再建しつつありました。東西ドイツが一緒になった後、ほぼ昔の街の姿を取り戻しました。4年前に私たち夫婦はドレスデンに行き、この街のゼンパーという名の州立歌劇場でオペラを鑑賞しました。完全に復元された歌劇場の壮麗な美しさに息を呑み、オペラの水準の高さに深く感動しました。
それをさかのぼる1989年10月、東ドイツは民主化を求める運動が盛んになり、国中でデモが頻発しました。当局の取り締まりが厳しくなる中、ベートーヴェンの唯一のオペラ「フィデリオ」が上演されました。このオペラは政治犯を主人公に、その妻が夫を救おうとする感動的なドラマ。権力の抑圧と人間の自由を主題にした作品で、舞台を当時の東ドイツに置き換え、観客には明らかな政権批判とわかる演出をしたのです。演出家や音楽家たちは、とても怖かったと振り返ります。警察や当局がいた中で舞台は最後まで上演され、終演後ホールには沈黙が支配した後、大喝采が10分ほど鳴り響きました。ドレスデンの快挙はドイツ全土に伝わり、民主化の熱を高め、ついにはベルリンの壁が崩壊するに至りました。苦難の時代にあっても人を励まし導く音楽家、偉大なベートーヴェン。わが国でも毎年、年末には交響曲第九番が演奏されることは、人類の希望と理想を載せて演奏されるもの、民主的で自由で平和な世界を目指して。
長崎交響楽団は1970年長崎港開港400年記念に合わせて、元事務局長、松本寛三氏らの尽力のもと、長崎県、長崎市のバックアップを得て、同年7月7日に発足。この時ベートーヴェン作曲「コリオラン序曲」を演奏しました。それから50年の日時がたちました。私は大学生のころからオーケストラの演奏に参加、五島での巡回公演が懐かしく思い出されます。1995年姉妹都市米国セントポールでの演奏会、1996年セントポール市民交響楽団と姉妹オーケストラ提携、そして1998年に招聘し長崎ブリックホール開館時、合同演奏会開催、その時マーラーの「巨人」を演奏しました。この様に国際交流や、地域社会への文化への貢献を幅広く行っております。
今年7月12日に記念コンサートが開催されます。皆様方のご来場を心よりお待ちしております。
50周年記念、第95回定期演奏会 、2020年7月12日(日)
マーラー:交響曲 第1番「巨人」モーツァルト:ピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」
独奏:山下 賢裕 指揮:三河 正典 長崎ブリックホール大ホール