メディカルニュース 生活習慣病と認知症
- 偉大な音楽家のお話
MEDICAL NEWS NO.52 APRIL 2017
生活習慣病と認知症
久山町は福岡市に隣接した街で、人口8500人、九州大学医学部がいろいろな疫学調査をする所で有名です。生活習慣病と認知症の研究もおこなわれましたので、その結果を見てみましょう。
脂質異常症、食品と栄養に関しては別の研究に基づくものです。
Jouranal of Blood Pressure(血圧)2017 No2 Vol24を参考にしました
高血圧と認知症:老年期のみならず、中年期の高血圧も脳血管性認知症(VaD)の危険因子となり、高血圧管理が発症予防に貢献することが認められました。しかしアルツハイマー型認知症(AD)との関連は認められませんでした。しかし最近の研究によると高血圧がVaDのみならずADの発症、進展にかかわることが解ってきています。
糖尿病と認知症:糖尿病の病態が重くなるにつれ、VaD、ADともに発症率は上昇しました。また別の研究によると、AD(アルツハイマー型認知症)が糖尿病を悪化することもわかっており、両者の間には悪循環のメカニズムがあることが想定されています。
喫煙と認知症:喫煙群は非喫煙群に比べ、中年期、老年期ともVaD,ADともに発症リスクが増大しており、禁煙が認知症予防において、極めて重要であることが示唆されています。
運動と認知症:運動に関しては、脳血管性痴呆(VaD)は一定の結論は出されませんでしたが、アルツハイマー型認知症(AD)において、運動による効果(リスクの低下)を認めています。
脂質異常症と認知症:悪玉コレステロール(LDL)が高い程、VaD,ADともに発症リスクが増大しており、逆に善玉コレステロール(HDL)が高い程、認知症の有病率が低下することが認められています。また脂質異常症の薬、スタチンはLDLコレステロールを低下させるので結果的に認知機能低下の抑制につながるものと思われます。またスタチン自体の抗炎症作用、血管病変を抑制する作用、血管内皮の一酸化窒素の亢進作用などの一次的作用でも、認知症に効果をもたらすことが考えられています。
食品・栄養と認知症予防:少量の飲酒、野菜、魚、ω-3脂肪酸、地中海式ダイエットの認知症予防効果が示されました。
地中海式ダイエットという食様式は具体的には、魚、野菜、豆類、果物、穀物、不飽和脂肪酸(おもにオリーブオイル)を多く食べ、乳製品、肉類、飽和脂肪酸は少なめに摂取し、食事中、中等量のワインを飲むという様式です。
ω-3脂肪酸は青魚の魚油に多く含まれ、内容はドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)で、抗炎症作用があり、ADには有用性が指摘されています。
日頃の生活習慣が認知症のみならず、様々な疾患に関係してきます。お互い気をつけましょう。