ふくろう通信 知っておきたい食後低血圧
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2011年5月
知っておきたい食後低血圧
食事後に席を立とうとしたとき、めまいやふらつきを起こしたことはありませんか?
もし、そんなことがあったら、「食後低血圧」の可能性があります。
その典型的な症状がめまいやふらつきですが、人によっては強い立ちくらみを起こし、そのまま気を失い、高齢者の場合には転倒して、骨折などの大ケガをすることもあります。
また最近は、食後低血圧が脳卒中や心筋梗塞のひきがねになる可能性も指摘されています。血圧の低下が起こりやすい時間帯は、個人差はありますが、食後30分~1時間程度です。
その後は次第に通常の血圧に戻るため、めまいやふらつきが食後低血圧によるものだと気がつかない方も少なくありません。65歳以上の高齢者では3人に1人程度が食後低血圧だと推定されています。大事に至る前に、食後低血圧の仕組みや対策について知っておきましょう。
食後低血圧が起こる仕組み
食後低血圧は、どのようにして起こるのでしょうか。食事をすると、消化・吸収のために大量の血液が腸の近くに集まります。そのままだと心臓の血液量が減り、血圧は低下しますが、急激な低下は危険なので、私たちのからだには心拍を速めたり、血管を収縮させるなどの方法で、血圧を維持するセーフティー機能が備わっています。これによって、脳への血流も維持されているので、健康な状態では食後にめまいなどは起こりません。
ところが加齢や病気によって、体内の代謝をコントロールする自律神経などがスムーズに働かなくなると、食後の血圧を維持するセーフティー機能がうまく作用しなくなり、急激な血圧低下が起こりやすくなるのです。一般に食後低血圧は、自律神経機能が低下しやすい高齢者に多くみられます。しかし、高血圧の方や糖尿病にともなう神経障害、パーキンソン病などの病気のある方にも起こりやすいので注意が必要です。また、高血圧の治療のために、食前に降圧薬を飲んでいる方にも食後低血圧が起こりやすい傾向がみられます。思い当たる場合には早めに医師に相談してください。
食後低血圧かどうかを知る
食後に眩暈やフラつきなどがよく起こる方は、まず自宅で食前・食後の血圧を測定してみましょう。食後は血圧がもっとも低下しやすいとされる食後1時間頃を目安に測定します。その結果、食後の収縮期血圧(最高血圧)が食前よりも20mmHg以上低下する場合には、食後低血圧の可能性が高いといえます。ただし、個人差もあります。加齢にともなう食後低血圧の場合、食事の内容や方法などの生活指導のほか、全体の血流を増やしたり、反対に腸への血流を減少させたりする薬(血糖値コントロール薬)が使用されることもあります。また、糖尿病やパーキンソン病などが原因と考えられる場合には、その治療も同時におこなう必要があります。あるいは食前の降圧薬が原因と推定される場合には、服用量を減らすなどの対応もとられます。このように同じ食後低血圧であっても、原因によって治療法は異なるので、食後低血圧かどうかだけでなく、その原因も確認しておくことが大切です。
日常生活での予防策
①食べすぎない:食べすぎ、とくに炭水化物(ご飯、おこわ、麺類、パン類)をとりすぎると、食後低血圧を起こしやすくなるので要注意。
②ゆっくり食べる:早く食べると、それだけ腸に血液が集まりやすく、食後低血圧を起こしやすくなります。ときどき箸を置きながら、ゆっくり時間をかけて食べるように心がけましょう。
③カフェインをとる:カフェインには血管を収縮させて、食後低血圧を予防する効果があります。コーヒーや緑茶などを食前・食後に飲んでみましょう。ただし不眠には注意しましょう。
④食後にしっかり休息をとる:食後低血圧の疑いがある方は、食後1時間以上はゆっくり休息をとりましょう。なお、こうした予防策でも症状が改善されない場合には、早めに受診してください。