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ふくろう通信 AI(人工知能)は人間を超えられるか~生身のドクターとAIドクター

  • 2018年

2018年12月 第231号

 私は医者になってもう40年にもなり、何とかここまでやって来られました。現在の世の中は私が医者になったころと激変し、AIが飛躍的に能力を高め、いろいろな場面で人間がやるべき、難しい仕事を簡単にこなせるようになりました。医者がやるべき事も、一部はAIができるようになっているようです。この先多くの医者が職を失い、AIがとって代わるのでしょうか。少し考えてみましょう。

 経営コンサルタント、中原 圭介氏は、AIやロボットの進化の度合いを考慮すると、医師の主な業務である患者の診断、薬の処方、手術などをAIやロボットが担うという趨勢は、不可逆的なものとなっていく、と言っています。

 アメリカの医療現場でのAIの実証実験においては、患者の症状や個人データ(年齢、性別、体重、居住地、職業、喫煙の有無など)を入力すれば、AIが膨大なデータをまたたく間に分析してしまい、誤診することなく病名を特定したり、適切な治療方法を割り出したりすることができるといいます。手術の分野でも、手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」は極めて性能が高く、ダヴィンチを使えば、人ではできない精緻で複雑な動きができるため、困難な手術をこなすことができるようになってきています。

 くすりに関しては、現在新薬を1つ開発するには、1000億円以上の費用と10年以上の期間が必要ですが、AIは創薬の分野で、大幅な費用圧縮と時間短縮を可能にすることが分ってきています。

 AIが医師の仕事を奪っていけば、医師の供給過剰は予想以上に深刻になり、厚労省の検討会では、2040年には最大4万人の医師が過剰になると推計しています。さらに過激な推定では遅くても20年後には、AIが医師の仕事の8割程度を代替し、必要とされる医師の数が激減するというのです。私はともかく、今後の医者たちのことを考えると、可哀そうな気持ちにもなります。

 

 確かにそうなることも多いでしょう。しかし本当に全てがそうでしょうか。AIが人間を追い越し、2045年それが完全に達成されるという学者います。しかしそれは間違いだと情報学者、西垣通氏は言います。彼の考えを参考に、私は次のように反論します。

  1. 生物と機械の本質的視点が欠けています。生物、人間は自分で自分を作っていく自律的存在に対し、AIは基本的には全部人間によって作られた他律的存在です。AIが今までに経験しなかった、新たな事態に、真に対応はできないのです。したがって、たとえば今まで知られなかった新たな事態、たとえば新しい感染症などは、データがないため、対応できないでしょう。
  2. 囲碁や将棋ではAIが名人を打ち負かしています。ゲームではAIが強い。しかし人間が深く考えるとの意味が違います。人間と機械の決定的な違いは、共感できる能力です。AIは人間に対し共感し、優しい気持ちで接することができるのか? 医者や医療従事者、家族が手を握ることだけでも、患者は大いに癒され、病態は改善されることも多いのです。AIには無理です。
  3. AIは芸術を生みません。例えばバッハは沢山の新しい曲を創造しましたが、AIはバッハめいた曲を作っても、それまでなかった、全く新たな音楽を創り出すことはできません。医療はアート(芸術)とも言われています。創造のない医療はアートとは呼ばれないでしょう。

どんなに進歩してもAIには主体性はありません。最後は機械でなく人間が決めるのです。

 

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