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ふくろう通信 長生きすることについて

  • ふくろう通信

20113 

長生きをすることについて

 

私は医者ですが、長生きできるかどうかあまり自信がありません。

だいたい医者の平均寿命は一般人に比べ、少し短いのです。それは一つには心身ともに比較的過酷な仕事のせいもあるし(現在の私はましなほうですが)、また昔から医者の不養生と言われていますが、それも一理ありそうです。私が診察している方をちょっと調べてみますと90歳以上で12名もおられます。1名を除き寝たきりでなく元気な方がたです。患者さんがまさに先生。長生きしても迷惑をかけることなく、これらの方のように長生きしたいと本当に思います。さて今回は長生きするにはどんなことがいいのか、白澤卓二氏(東京都老人総合研究所分子老化研究グループ)によりますと………

 

ギネスブックが世界一の長生きと認定したのはフランス人女性のカルマンさん。

1875年2月、南フランスのアルルに生まれ、1997年8月に122で亡くなりました。カルマンさんの場合、両親は母親が86才、父親が93才まで長生きしています。カルマンさんは遺伝的に有利な要因を持っていました。カルマンさんは結婚して娘を出産しましたが、その娘イボンヌさんは1934年に死亡。夫も38年に、唯一の孫も63年にそれぞれ亡くなりました。カルマンさんを母や祖母に持ちながら、なぜ彼女の子孫は長生きできなったのは、一方の親だけが長寿でも十分でないのかも知れません。

 

「くよくよしない」「他人を思いやる気持」が長寿の秘訣
長寿の両親から受け継いだ遺伝素因のおかげか、カルマンさんの体はとても強く、85才からフェンシングを始め、100才を越えても自転車でアルルの街の中を快走していました。頭脳も終生明晰で、痴呆症状も全く見あたりませんでした。「私って普通のご婦人でしょ!」などユーモアを持ち続けて、120才の誕生日を祝うために世界中から集まった人たちに将来の事を聞かれ、次のようにウイットに富んだコメントを残しています。「私は最近、神に見捨てられてしまったのョ」「勇気があるからどんなことにも恐れない」 「うまく行ったときはうれしかった。これまでにしっかり正しいことのために行動したことに後悔はない。私の人生は本当に幸運だった。」 121歳の誕生日には回顧録を収録したCDを出し世界にアピールしました。

情緒豊かに長い人生を全うしたカルマンさん。最後まで、他人を思いやる気持ちを大事にしていたとされ、亡くなる2年前にやめたタバコは、健康上の理由でなく、視力が衰え、タバコに火をつけるよう付き人にお願いすることに気を遣ったためだと後に主治医が語っています。カルマンさんの豊かな人生は、「思いやりの心」「くよくよしない性格」のご褒美だったのかも知れません。

 

新しい神経細胞が嫌な記憶を消す

脳の中で記憶を司るのが海馬と呼ばれる部分で、脳の神経細胞は長い間、大人になったら増殖しないと考えられていましたが、成長した後も神経細胞は新たに誕生し続けていることがわかりました。海馬では、新たに誕生した神経細胞によって新しい記憶を一時的に蓄積して、過去の記憶のうち残すべき記憶と不要で消すべき記憶を選別しているらしいのです。我々が夜、夢を見ているときには脳内でこの選別作業が行われているらく、夜間の脳波がその選別作業を示唆しています。百歳まで生きた百寿者といわれる超長生きの方はくよくよ考えない楽天的な性格の人が多く、その前向きな性格でいくつもの人生のハードルを乗り越えてきました。実験結果と考えあわせると、くよくよ考えない長寿の人たちは脳の中でどんどん運神経細胞を再生させて嫌なことを忘れているのかも知れません。長寿のための処世術の一つ「くよくよしないこと」「思いやりの心」はカルマンさんが21世紀を生きる我々に伝えようとしているメッセージなのでしょうか。

 

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